「通信制高校に行きたいけれど、学費が払えるか心配」
「母子家庭でも私立の通信制高校に通わせられる?」
そんな不安を持っている家庭は少なくありません。
通信制高校は、全日制高校とは違って学校ごとに学費の差が大きく、授業料以外にも入学金や教材費、スクーリング費用などがかかることがあります。
ただし、通信制高校でも高校無償化の制度を利用できます。
さらに、ひとり親家庭向けの貸付制度や、低所得世帯向けの支援制度を利用できる場合もあります。
まずは、主な制度を一覧で見てみましょう。
| 制度 | 主に何を支援する? | 返済 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 高等学校等就学支援金 | 授業料 | 不要 | 高校生など |
| 高校生等奨学給付金 | 教材費など授業料以外 | 不要 | 一定の所得要件を満たす世帯 |
| 母子父子寡婦福祉資金 | 入学・修学に必要な費用 | 必要 | ひとり親家庭など |
| 生活福祉資金の教育支援資金 | 修学に必要な費用 | 必要 | 低所得世帯など |
| 学校独自の制度 | 学費の分割・減免など | 学校による | 学校ごとに異なる |
ポイントは、一つの制度だけで考えないことです。
授業料は就学支援金、教材費などは給付金、入学時に不足するお金は貸付制度というように、複数の制度を組み合わせることで負担を減らせる可能性があります。
目次
通信制高校も高校無償化の対象
私立の通信制高校は学費が高いと聞くのですが、うちでも高校無償化の制度は使えるのでしょうか?
一般に「高校無償化」と呼ばれている制度が、「高等学校等就学支援金」です。
高校の授業料を国が支援する制度で、通信制高校も対象になります。
2026年度から制度が変更され、所得制限が撤廃されました。
私立の通信制高校の場合、支援額の上限は年間33万7,200円です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 高等学校等就学支援金 |
| 対象 | 全日制・定時制・通信制など |
| 私立通信制の支援上限 | 年間33万7,200円 |
| 返済 | 不要 |
| 所得制限 | 2026年度から撤廃 |
| 主な対象費用 | 授業料 |
ただし、33万7,200円がそのまま家庭に振り込まれるわけではありません。
基本的には学校が支援金を受け取り、その分が授業料から差し引かれます。
また、通信制高校の多くは「単位制」の授業料(1単位ごとに費用がかかる方式)を採用しています。この場合、支援金も年間30単位を上限に単位ごとに計算される仕組みのため、「年間33万7,200円が一律にもらえる」というより、履修する単位数に応じた金額が授業料と相殺されるとイメージするほうが正確です。
「高校無償化=全部無料」ではない
ここは特に注意したいところです。
高校無償化の対象になるのは、主に「授業料」です。
通信制高校では、それ以外にも費用がかかることがあります。
| 費用 | 就学支援金の対象になりやすい? |
|---|---|
| 授業料 | ○ |
| 入学金 | × |
| 教材費 | × |
| 施設設備費 | × |
| タブレット・PC代 | × |
| スクーリング費 | × |
| 交通費 | × |
| 宿泊費 | × |
| 制服代 | × |
| 行事費 | × |
「授業料が無償になる=通信制高校に無料で通える」という意味ではありません。
学校を比較するときは、授業料だけではなく「年間で実際にいくら払うのか」を確認する必要があります。
自治体独自の給付金の例:広島県「学びの変革環境充実奨学金」(公立高校向け)
就学支援金の対象外になりやすいパソコン・タブレット代についても、自治体によっては独自の給付金を用意している場合があります。たとえば広島県では、学校の指示で生徒用コンピュータを自己負担購入した世帯を対象に、次のような給付金制度を用意しています。ただしこの制度は広島県内の国公立高等学校等が対象で、私立高校(私立通信制高校を含む)は対象外です。私立高校に在学している場合は、広島県環境県民局学事課への確認が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 広島県高等学校等学びの変革環境充実奨学金 |
| 対象校 | 広島県内の国公立高等学校等(通信制含む)。私立高校は対象外 |
| 対象世帯 | 住民税所得割非課税世帯・生活保護受給世帯など(生業扶助を受給している生活保護世帯を除く) |
| 給付額 | 全課程一律25,600円 |
| 返済 | 不要 |
| 支給回数の上限 | 年1回・通算3回(定時制・通信制は4回) |
| 申請 | 毎年度必要 |
同様の制度がお住まいの自治体にもないか、教育委員会に確認してみましょう。
たとえば学費50万円ならどうなる?
仮に、年間費用が次のような通信制高校があるとします。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 授業料 | 30万円 |
| 入学金 | 5万円 |
| 施設費 | 5万円 |
| 教材・システム費 | 5万円 |
| スクーリング等 | 5万円 |
| 合計 | 50万円 |
このうち、就学支援金の対象になるのは基本的に授業料部分です。
仮に授業料30万円が全額支援の対象になった場合、
| 内容 | 金額 |
|---|---|
| 年間総額 | 50万円 |
| 就学支援金 | ▲30万円 |
| 実質負担 | 約20万円 |
となる可能性があります。
もちろん実際の支援額は学校や履修単位数などによって異なります。
そのため、資料請求をしたら必ず、
学校への確認ポイント
「就学支援金を使った場合、年間の自己負担額はいくらですか?」
と学校に確認してみましょう。
入学時には一時的にお金が必要になることも
もう一つ注意したいのが、支援金の支給時期です。
学校によっては、就学支援金が決定する前にいったん授業料を支払い、あとから支援額が還付されることがあります。
そのため、「無償化されるから、入学時にはお金はいらない」とは限りません。
入学前には次の点を確認しておきましょう。
| 確認すること | 学校に聞く内容 |
|---|---|
| 授業料の立て替え | 支援金決定前に払う必要がある? |
| 分割払い | 月払い・分割払いは可能? |
| 延納制度 | 支払いを待ってもらえる? |
| 還付 | 支援金はいつ反映される? |
母子家庭・父子家庭なら「母子父子寡婦福祉資金」もある
筆者の体験談
筆者も母子父子寡婦福祉資金や生活福祉資金制度を活用した経験があります。修学資金・就学支度資金・教育支援資金はいずれも無利子で、筆者の場合は修学する本人が連帯借主となることで、第三者の保証人なしで借りることができました(保証人の要否は自治体や状況によって異なるため、申込み先に必ず確認してください)。
ひとり親家庭の場合は、「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を利用できる可能性があります。
高校進学に関係するものとしては、主に次の2つがあります。
| 種類 | 用途 |
|---|---|
| 修学資金 | 高校に通っている間の学費など |
| 就学支度資金 | 入学時に必要な費用 |
修学資金
修学資金は、学校に通い続けるために必要なお金を借りられる制度です。
国の基準額をもとにした月額の目安は次の通りです。
| 区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
|---|---|---|
| 国公立 | 2万7,000円 | 3万4,500円 |
| 私立 | 7万8,000円 | 8万9,000円 |
ただし、実際の貸付限度額は都道府県・市区町村ごとに条例等で定めるため、この金額どおりとは限りません。通信制高校が対象になるかどうかや、実際に認められる金額は、お住まいの自治体の窓口に必ず確認しましょう。
就学支度資金
就学支度資金は、入学時のまとまった費用に使える貸付制度です。
たとえば、
- 入学金
- 教材費
- 制服
- 学用品
- 通学に必要なもの
など、入学準備に必要なお金について相談できます。
通信制高校ではパソコンやタブレットが必要になる場合もあるため、入学前の資金が不足している家庭にとって助けになる可能性があります。
返済不要の「高校生等奨学給付金」も確認
就学支援金とは別に、「高校生等奨学給付金」という制度もあります。
こちらは、授業料以外の教育費を支援するための制度です。
| 比較 | 就学支援金 | 高校生等奨学給付金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 授業料の支援 | 授業料以外の支援 |
| 返済 | 不要 | 不要 |
| 教材費など | 原則対象外 | 対象になり得る |
| 申請 | 必要 | 必要 |
授業料は就学支援金で減らし、教材費などは奨学給付金で補う、という考え方です。
特に低所得世帯やひとり親家庭の場合は、両方利用できないか確認しておきましょう。
低所得世帯なら「教育支援資金」という選択肢も
低所得世帯の場合は、「生活福祉資金貸付制度」の中にある教育支援資金を利用できる場合もあります。
高校の場合、教育支援費の貸付上限は原則月額3万5,000円以内です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度 | 生活福祉資金・教育支援資金 |
| 主な対象 | 低所得世帯など |
| 高校の貸付上限 | 月額3万5,000円以内 |
| 利息 | 原則無利子 |
| 相談先 | 社会福祉協議会など |
ひとり親家庭向けの制度が利用できない場合でも、こちらを使える可能性があります。
お金が心配なら「制度を組み合わせる」
通信制高校の費用を考えるときは、次のように整理するとわかりやすいです。
| 必要なお金 | 利用できる可能性がある制度 |
|---|---|
| 授業料 | 高等学校等就学支援金 |
| 教材費・学用品 | 高校生等奨学給付金 |
| 入学金 | 母子父子寡婦福祉資金 |
| 入学時のまとまった費用 | 就学支度資金 |
| 毎月の修学費 | 修学資金 |
| 低所得世帯の教育費 | 教育支援資金 |
| 一時的に支払いが難しい | 学校の分割・延納制度 |
条件に応じて制度を組み合わせられる場合もありますよ。まずは学校に無償化後の年間総額を聞いてみましょう。
「学費が50万円だから50万円用意しなければならない」と考えるのではなく、
どの費用に、どの制度が使えるのかを分けて考えることがポイントです。
ただし、支援制度は条件に応じて組み合わせて利用できる場合がありますが、「複数の制度を満額ずつ自由に併用できる」というわけではありません。それぞれの制度には役割と優先順位があります。
| 制度 | 他制度との併用 | 考え方 |
|---|---|---|
| 高等学校等就学支援金 | ○ | 授業料を支援 |
| 高校生等奨学給付金 | ○ | 授業料以外の教育費を支援 |
| 母子父子寡婦福祉資金 | ○の場合あり | 就学支援金などで足りない修学費・入学費を貸付 |
| 生活福祉資金「教育支援資金」 | △(条件付き) | 他の公的制度を先に利用し、それでも不足するときに利用 |
まず、「高等学校等就学支援金」と「高校生等奨学給付金」は役割が分かれているため併用できます。就学支援金は授業料、奨学給付金は教材費など授業料以外の教育費を支援する制度です。
ひとり親家庭の場合は、そこに母子父子寡婦福祉資金の修学資金・就学支度資金を利用できる可能性があります。ただしこれは給付ではなく貸付です。他の給付や授業料減免などで同じ費用がまかなわれる場合は、貸付額が調整されたり、すでに借りた分の返還が必要になったりする仕組みがあります。給付金を受け取ったうえで、同じ費用を貸付でも満額受け取るという二重取りはできません。
さらに生活福祉資金の教育支援資金もありますが、社会福祉協議会では、ひとり親家庭の場合はまず母子父子寡婦福祉資金を優先して相談・利用するよう案内されることが一般的です。そのうえで、母子父子寡婦福祉資金を利用してもなお不足する場合に、教育支援資金との併用が可能になることがあります。
整理すると、ひとり親家庭では次の順番で確認していくとわかりやすいでしょう。
- 「高等学校等就学支援金」で授業料を減らす
- 「高校生等奨学給付金」で教材費などを補う
- それでも入学金・修学費などが不足するなら「母子父子寡婦福祉資金」を相談する
- それでも不足する場合に「生活福祉資金の教育支援資金」を相談する
支援制度は、条件に応じて組み合わせて利用できる場合があります。たとえば、授業料は「高等学校等就学支援金」、授業料以外の教育費は「高校生等奨学給付金」で支援を受け、それでも不足する費用について、ひとり親家庭では「母子父子寡婦福祉資金」を利用できる場合があります。さらに不足する場合には「生活福祉資金の教育支援資金」を併用できることもあります。ただし、貸付制度には優先順位や貸付額の調整があるため、自治体や社会福祉協議会への確認が必要です。
通信制高校を比較するときのチェックリスト
資料請求や説明会では、次のことを確認しておきましょう。
- 就学支援金の対象校か
- 支援金適用後の授業料はいくらか
- 年間総額はいくらか
- 入学時に必要な金額はいくらか
- 分割払いができるか
- 延納制度があるか
- 学校独自の奨学金があるか
- スクーリング費はいくらか
- 交通費・宿泊費が必要か
- PC・タブレット代はいくらか
特に大切なのは、「就学支援金を使ったあとの年間総額はいくらですか?」
と聞くことです。
お金だけで通信制高校をあきらめなくてもいい
通信制高校への進学や転校を考えているとき、
「私立だから無理」
「母子家庭だから払えない」
と思ってしまうこともあるかもしれません。
でも、実際には利用できる制度が複数あります。
まずは次の順番で確認してみてください。
- 気になる通信制高校の学費を確認する
- 就学支援金適用後の金額を学校に聞く
- 高校生等奨学給付金を確認する
- ひとり親家庭なら母子父子寡婦福祉資金を相談する
- 低所得世帯なら教育支援資金も確認する
- 学校独自の分割・延納制度を確認する
通信制高校を選ぶときに大切なのは、ホームページに載っている学費だけを見て判断しないことです。
制度を使ったあとに、
「最終的に家庭からいくら出す必要があるのか」
まで確認してから比較してみましょう。
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※記事内の制度・金額は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。最新の要件・金額は文部科学省・お住まいの自治体・各学校に必ずご確認ください。

